自然と調和する喜びを教えてくれる
メープル家具専門店 SERVE という名のオアシス
安らぎに満たされる 慈しみ溢れる家具との暮らし
メープル家具を専門に扱う「SERVE」。小金井に本店を、湯河原には実際に住まいとして利用している店舗をもつ。美しい自然環境と調和し、暮らしに優しい温もりを灯す家具の魅力に触れるため、本書エディターMが「SERVE」を訪ねた。
つくり手のメープル材に対する深い愛情が伝わる
シンプルで美しく、味わいのある家具たち
しっとりとした感触のなめらかな木肌。触れるほどに気持ちが和らぐ不思議な力。メープルの家具には、ほかの木材にはない、清々しい上品さがある。透明感のある佇まいそのものがソフトで微笑ましく、大自然の穏やかな時の流れを住空間に満たしてくれる。
「SERVE」のデザインは、無駄な装飾を排し、潔いまでにシンプルだ。供給量が減少し、希少性の高い北海道産イタヤカエデ(国産メープル)の表情や個性をいかに引き立てるかに注力する。シンプルだけれど、そこはかとない美しさを漂わせ、シンプルだからこそ普遍性があり、長く愛用できる。素材がもつ特性をたっぷりと堪能することで得られる充足感。それぞれの生活にそっと寄り添い、空間と共存する「SERVE」の家具は、つくり手の誠実で強いこだわりと、メープル材への深い愛情を受け、魅力を放っている。
実際の住空間の中で選ぶからこそ、生活の道具としての価値が分かる
5月下旬。雲ひとつない青空のもと、湯河原の駅に降り立つと、美しく煌めく新緑が山々を鮮やかに彩っている。「SERVE湯河原店」は、この山の上にある。駅から車で10分。坂を上り、そして急勾配を下る。「こんなところに店があるのか?」。素朴な疑問が頭をよぎった瞬間、眩しいほどの緑が生い茂る一軒家が現れた。360度ぐるりと山に囲まれた250坪の敷地に建つ住居では、キッチン、リビング、ベッドルーム、書斎、サンルームなど、空間ごとに「SERVE」の家具を活かしたコーディネートが提案されている。ユニークなのは、店主夫妻が実際に住まわれているということ。素朴でありながら、部屋の一つひとつ、庭の隅々に至るまで、丁寧に手入れが行き届いた環境は、夫妻の愛着を感じさせる。リアルな住空間の中で佇む家具は、大切に扱われているからこその有機的な生き生きとした輝きを放っている。テーブルの上には、庭に咲く花の一輪挿しが愛らしさをにじませ、窓から降り注ぐ陽光にさらされたチェストは、こっくりと飴色に経年変化し深みを醸し出している。本棚として、椅子として、ダイニングテーブルとしてその役目を日々果たしている家具たち。心が洗われるような、のどかな空間の中、それらに触れてみると、心がぽっと温かくなるような感覚を覚えた。自分にとって心地いいものとは何か、大切な時間とは何か、暮らし方の本質に立ち返らせる。住まう環境の中で魅力を放つ「SERVE」の家具は、実用性のみならず、気持ちを豊かにさせるエッセンスをもっている。
- パイン材のフローリングの爽やかな空間の中で、メープル家具の個性が引き立つ2階のフロア。天板が浮いたように見えるダイニングテーブルはオリジナルのデザイン。反り止めと幕板の構造を利用した構造美とアームチェアが天板下に収まる機能美を宿している。
- キッチンの先には、窓から差し込む自然光が気持ちいいサンルーム。ダイニングやリビングのコーディネートが提案され、思い思いのくつろぎのスタイルが見つかる。
- 白い木肌が日差しを受けて艶やかに輝き、年数の違いによる風合いの変化も実際に確認することができる。メープル材は明るく反射するので空間を広く見せる効果も。家具の配置やスペースの取り方、採光法なども参考にしたい。
- メープルの温もりと真っ白いリネンが上質な眠りを誘うベッドルーム。丸脚とヘッドボードのデザインに柔らかさを感じさせるベッド「BDK01DB」。同じく、丸脚、丸いつまみで愛らしい表情をもつチェスト「WDK01」は、1991年のリリース以降ロングセラーを誇る商品。
SERVE 湯河原店
神奈川県足柄下郡湯河原町宮下744-94
湯河原駅よりバス停「藤木橋」下車、徒歩10分
☎ 0465-63-6383 www.serve.co.jp
定休日:水木 11:00~17:00
メープルに魅せられた創業者がつくる、良質なBGMのように空間に調和する家具
- イタヤカエデの表情の豊かさを感じさせるサイドボード「SBK01G」。飽きのこない、すっきりとしたデザインで、控え目な波状杢が柔らかい雰囲気をつくり出す。
- 使い心地を追求するためマイナーチェンジを繰り返し、完成度を高めたウッドフレームソファ「SFK05S2」。高密度ウレタンと高品質のマザーグースフェザーを使用している。
素朴でありながら、心を満たすオーラをもつ「SERVE」の家具。その背景を探るため、創業者の佐和田誠一氏がいる、緑豊かな小金井公園に隣接する本店を訪ねた。看板犬のコハルと現れた佐和田氏は柔和でいて、メープル材の話になると少年のように目を輝かせる。「惚れちゃったんですよね」と、愛おしそうにテーブルをなでる佐和田氏とメープル材の出会いは約30年前。たまたま手にしたシェーカー家具の写真集がきっかけだった。「デザインはもちろん、飴色に変化したメープルの表情の美しさに衝撃を受けました。大切にされているものって、自ら輝きを放つのだと写真からも伝わってきた。自分がオリジナルで家具をつくるときは、メープルしかないと思いました」。家具材として主に使われているメープルには、一般的な北米産のハードメープルと希少価値の高い国産のイタヤカエデの2種類がある。同じ樹種で性質も見た目も同じように見えるが、佐和田氏は違う。「木目が非常に緻密で表情が豊かなのがイタヤカエデ。織物でいうと綾織りといいましょうか。それに対し単調な平織りがハードメープル。兄弟でも表情が全然違うんですよ」。素材を味わってほしいという佐和田氏は余計なデザインをしない。「世の中には、凝って美しいものもありますが、僕はシンプルだけど美しい家具をつくりたい。欲をいえば味わいもあるといい。実際に使って気持ちいいと思える良質なBGMのような家具をイメージしています」。それを伝えるには、生活の中で使われている家具を見せるのが一番。だから湯河原店のようなスタイルを大切にしている。「家具は飾って楽しむものでなく、見て、触れて、使ってこそ意味をもつ。家具の善し悪しは、住まいながら見せることで分かります」。つくり手の深い愛情によって生まれる「SERVE」の家具。多くの人を惹きつける理由が分かった。
Special Mention
「SERVE」の家具になるために伐り出される北海道産イタヤカエデ
年間の伐採量が制限され、一般的にほとんど流通がない国産のメープル材。そんな希少性のある素材が、北海道・紋別の山の保有者や製材所の協力のもと「SERVE」のために特別に伐り出されている。命ある樹木が人の手によって伐り出され、職人の手で家具として形を変える。ひとつのプロダクトに込められた、たくさんの人たちの想いが、温もりとなって伝わってくる。だからこそ、長く、大切に愛したい。
SERVE 小金井公園本店
小金井市関野町1-7-2 1F
東小金井駅よりバス停 「小金井公園前」下車すぐ
☎ 042-380-8320 www.serve.co.jp
定休日:火(除祝) 11:00~18:00