• 新規オープンが続いた、2012年のライフスタイルショップ

    s-140-kmoriya-01幾何学と同様に目立って増えているのが、和の要素をモチーフにしたものである。伝統的な職人の工芸技術を駆使して作られるものや、畳間の和室にも合わせられる和洋折衷なテイストのアイテム等。まずは、「ジャパンクリエイティブ」の活動にフォーカスしよう。これは、日本の伝統技術や美意識を新たな形で世界に発信していくプロジェクト。第一線で活躍中の世界の有名デザイナーが、日本の伝統工芸技術を使って新しいデザインを生み出しており、2012年のミラノサローネでも新作を発表した。たとえば、イギリスのジャスパー・モリソンは南部鉄器の鉄瓶を、フランスのインガ・センペは織部焼の器を。それぞれに異なる素材や製造技術の特性を捉え、日本の優れた職人とコラボレーションすることで、これまでにはない和のアイテムをデザインし好評を博している。さらには、イタリアの「Cassina(カッシーナ)」から近年続けてシャルロット・ペリアンの家具が復刻されていることもこのトレンドと一致する。1940年に商工省(現在の経済産業省)に招聘され、輸出工芸の品質を向上させるための指導役として来日していた彼女のデザインは、和室の設えから着想を得ているものも多い。手がけた家具は、おのずと和室にも洋室にも合わせられる万能性を備えている。
    s-140-kh220-01 そして日本の気鋭デザイナーも負けてはいない。「h220430」名義で活動する板坂諭は、漆塗りの初日の出を題材にした照明をデザインし、安積伸はシワ加工を施した和紙を使ったインテリアオブジェを発表。岡山の家具デザイナー、守屋晴海によるロッキング仕様になった座椅子も新しい和洋折衷のスタイルとして面白い。極めつけは前述した「ジャパンクリエイティブ」の内部スタッフでもあるデザイナー、角田陽太である。ミラノサローネで発表した伝統的な木工技術であるホゾ継ぎで作られた家具が、フランスの「ligne roset(リーンロゼ)」の目にとまり、2012年に製品化された。装飾主体の意匠としてのデザインでなく、製造工程を含めた完成度の高さが評価に繋がっているのだろう。細やかな手仕事でしか作り得ない工芸品としての美しさに、世界が注目する和の魅力が存在しているのかも知れない。
    s-140-kpel-01k 以上に挙げたトレンド要素を、たとえばヴィンテージの壁紙やテキスタイルに見出すのか、DIYによるセルフペインティングで取り入れてみるか、和骨董や最新のデザイン家具を置いて楽しむかは自由である。これらの中から何かひとつのキーワードに絞ってショップ巡りをすることも、様々な発見があって良い刺激となるはずだ。どうか思い思いにインテリアを作る楽しみを謳歌してほしい。中心となる住まい手が心地よく快適に過ごすために。

     

     

    Text by
    川合将人 
    インテリアスタイリスト
    住宅メーカーやショップのカタログ、広告、展示等を中心に、コンテンポラリーなアイテムを巧みに取り入れたスタイリングを提案。また、豊富な経験をもとに各メディアで執筆も行う。
    www.kawaimasato.com


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